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半透命
私は、中村さんの人生の中に残りたいな。
もしもいつか、遠く離れてしまって二度と会えないひとたちになってしまっても。
思い出すことがあったならいいのにな、こんな日もあったねって。
だって、あたたかいでしょう、こんなことって、大切でしょう。
そう言うの、積み重ねて行ってあげたいけれど、私たちは目が回るくらい毎日毎日、色んなことで忙しくって。
だから、愛が終わらない間に、いくつかでも私は見つけるよ。
あなたが、穏やかな心に浸れる、大きな傷跡を癒せる時間を作るよ。
そうして、この繋いだ手のひらの中に、そっと置いて行くからね。
いつか、それに気がついて、そおっと目の前に翳してみて欲しいの、お願いね。
ろくでもない記憶じゃなくって。
ありふれていてもいいから。
思わず手に取って持ち帰ってしまう、使い道に迷う癖に。
そんな淡くくすんだ、不透明なシーグラスみたいな。
目の前に翳しても、向こう側が正しく見えない、
便利な、宝石。
そう言うのに、なりたいの、私。
あなたの、そう言うのに、なりたいの、私。
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