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支えって
人と言う字は、ってやつだ。
私は、中村さんと寄りかかり合っていて、はじめて人間っぽくなれる時があるような気がするのだけれど。
彼の方は、そんな風には思っていないかもしれないな、とも思う。
考えたことすらも、ないかもしれない。
「…中村さんのこと、私は、ほんのちょっとでも支えることが出来ていたりしますか?」
「なんで突然。真面目な話?」
「あ、仕事のことは抜きでお願いします。支えてます。精一杯ですあれが。私生活での、話です」
「そりゃあなあ。うたがいると、飽きないよ。…そうだなあ、…寂しくないから、いいけど。俺は」
「えええ。中村さん、寂しいって感情あるんですか」
「…おまえは。ったく。確かに一人でも苦には思わないけど。…俺はけっこう、喋りたがりだから」
そうだろうか。
言われてみれば、そんな気もしなくもないけれど。
重要な話や、相談事を私にして来てくれたことはなかったと思う。
役に立っているのかいないのか、自分ではよくわからない。
「支え、って…、お喋り相手になるだけで、いいんですか?」
「他にもあるよ。ちゃんと、いてくれて嬉しいな、ってこと」
「…そ、…そうですか。ありがとう、ございます…」
「雑学良く教えてくれるしな。脳の皺、増えたんじゃないの」
「脳の皺って、頭蓋骨に詰めるためにくしゃってなるだけで、賢さ関係ないですからね」
そんなどうでも良いことを、また教えてしまって、中村さんが吹き出した。
そんなのでも、どんなのでも、彼のことを笑顔に出来るのは嬉しいことなので、頬が勝手に上がってしまう。
こんな感じで私たちは、目指す目的地まで、ぼんやりと、のんびりと、部屋で二人で過ごしているのと変わらない雰囲気を崩さずに、短い旅を楽しんだ。
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