壺中の天女

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喫茶店の一番奥の席で、俺達は向かいあって座っていた。狭いテーブルの上には先ほど注文した料理が並んでいる。俺はトーストとホットコーヒー、彼女はパンケーキとカフェオレだ。日曜日の朝、ラブホテルのすぐ前にある喫茶店で食事をするのが俺達の決まり事だ。 「水原さん、今日は何をするんですか?」 彼女はそう言いながら、切り分けたパンケーキを口に放り込む。 「今日は家でゴロゴロしようと思います。葵さんは何をするんですか」 「私は図書館に行こうかなと思います」 「そうですか」 何気ない会話が終わり、俺達は黙々と食事をする。いつもと変わらぬ日曜日の朝だ。この関係が始まってもう一年が経つ。俺達は、セックスフレンドだ。
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