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「……ふぁ〜、ねみぃ〜。そろそろ休憩するか〜?」
白髪の少年は、そう言いながら大きなあくびを繰り返していた。赤い目の下には大きなくまができている。彼の隣を歩く小柄な少年は、慰めるように言った。
「ほな、まずは飯やな、飯。前に来た時にも食べた星鐘島特産のパイ、あれ食べに行こうや」
特産のパイとは、星鐘島近空を飛ぶ魔魚を突き刺して焼いた、星型のパイのことである。好きな人は好き、と言えば聞こえはいいが、珍味に分類される代物だ。想像の中、《空魚》と目が合った気がして、白髪の少年はあからさまに表情を歪めた。
「エ゛ッ……。フィナ、お前、まさかあのクソマズパイが好きだったのか?」
「あんの《空魚》独特の薫りと歯ごたえがうまいんやないか。なんと言ってもおもろいよな〜、見た目が」
「その全部が最悪だろ」
「まぁええやろ、ラグにはまだちいと早いっちゅうだけの話や。とりあえずパイの店に行ってみよか〜」
「まじかよ……」
ラグと呼ばれた白髪の少年は、肩を落としつつ路地を進む。地図上は遠回りに思えるが、近隣のパイの店へ行くなら最短経路だ。なにせ今日は七年に一度の星降祭、人の多さは尋常ではない。
小柄な少年フィナは、パイが食べられるということでご機嫌そうだ。寝不足もあってふらふらと歩くラグの後ろを、辺りを見回しながら歩いていく。今にもスキップでも始めそうなほど。
「なぁなぁ、ラグ〜!」
「なんだよ?」
「あっち見てみい。おもろいもん転がっとるで!」
フィナの指さす先を見たラグは、盛大に顔を顰めた。二人の歩く路地から横に伸びた細い裏路地、入ってすぐの場所に男が三人倒れていたのだから当然だろう。ラグはいかにも面倒そうに首を傾げた。
「あいつら、生きてるよな?」
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