計画の始まり

2/2

60人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
 突然、目の前に現れた哲人に安楽死の計画案を聞かされ、博美は変人の戯言だと思ったが、意外にも河本聡太郎と曽倉哲人の相性は良く。河本は博美が代弁した提案を度々受け入れ、野党連合のリーダーとして衆参同日選挙を優勢に進め、遊援党の議席数も増えて総理大臣に指名された。 「人に好かれる河本と、人を愛せない哲人がマッチしたようね。正直、貴方の魔法には驚いたわ」 「一部、訂正。僕は博美を愛した実績がある。君が僕に別れを告げ、今も僕は独り身だという事を忘れてないか?」 「そういえば、私は平凡な男と結婚して子供を二人授かり、幸せに暮らしているわね」  博美が政策秘書官に選ばれた翌日、深層仮想株式会社に一人招かれ、シークレットスペースに案内されて4センチサイズの立方体に収められたAI半導体と軽量VRグラスを見せられ、陰陽師五芒星の形状をしたAI中枢部を披露された。 「これが、スリープダウン?」 「まだ開発中だけどね。それより今日はこれを見せたかったんだ」 「これって、京都の晴明神社……安倍晴明の家紋?」 「そう、この五芒星の『AI・晴明(セイメイ)』がスリープダウンの全知全能の神となる。実はこれまでの提案は僕と晴明(セイメイ)の政治プロデュースだったんだ。Netflixの手法、キャスティング、国民の趣味趣向を分析し、僕がアイデアを考えて戦略を立てた」 「それって、AI将棋を指すように政治ゲームをしたってことかしら?」 「うーむ、鋭い喩えですね」 「やはり、貴方と別れて正解だったわ」
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加