予知の信憑性

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「しかし俺は優秀なエージェントだぜ」と坂崎が笑みを浮かべて前屈みになると、龍音と美花も顔を寄せ合い、周辺を警戒しながらコソコソと話す。 「ハッキングしたのか?」 「いや、あり得ん。深層仮想のファイアウォールは強固だし、ソクラのセキュリティを破れる者はいない」 「じゃー、なによ。ブッちん、もったいぶらずに白状しな」(美花は坂崎が倶楽部の部長なので、ブッちんと読んでいる。) 「ニューヨークタイムズのコラムに、ソクラが日本に帰国する前のインタビュー記事が載っている」 「それはサイエンスで読んだぞ。1901年にダンカン・マクドゥーガルが人間の魂は21グラムだったと発表し、それを知ったソクラは幼い頃に霊魂のエネルギーに興味を持ち、研究テーマにしたと答えている。特に目新しい事は言ってないぞ」 「大学の研究室を抜けんだから、丸秘事項が多くて語れずか?」 「俺が着目したのは記者の感想だ。ソクラは日本国で陰と陽を操り、イノベーションを起こすだろう。と書いている」 「晴明……陰陽道か?」 「これはアメリカの友人から仕入れた噂話しだが、AI晴明は人間の脳波を受信し、善人か悪人か見極める事が可能だと言われている」 「フムフム、龍音のスリープダウンに興味を持ったのも頷けるわね」 「だろ。だろ。予知は的中し、睡眠用VRアプリスリープダウンは安楽死のお供になる」  美花と坂崎が手を叩き合って同意し、龍音は頬を引き攣らせて「すげ〜、参考になった」と微笑み、暫し言葉少なにコップを空にして解散となった。
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