理想的な条件

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理想的な条件

 龍音と美花は中山駅のホームで十日市場行きの電車に乗り、仲良く端の席に座ってバウハウスの前で坂崎と別れたシーンを思い返す。坂崎は二人に手を振り、捨て台詞を残して去って行った。 『俺たちは好きなことをやるウイルスに感染している。親や世間に馬鹿にされても、お前が理想とする道へ進めばいい。俺はそう思うぜ』 「なんか、ブッちん。カッコよかったな〜」 「うん。いつもふざけて終わんのに、今日は最後までカッコつけてやりきったな」  しかし坂崎は通りで犬の糞を踏み、電信柱の陰でベッタリと汚れた靴底を見て、『道は慎重にな』と頭を抱えた。  坂崎と龍音は中学校は別々だったがゲームセンターで仲良くなり、美花は高校入学の春に十日市場に引っ越して来て、学年でも浮き気味の三人はすぐに意気投合して『オタク倶楽部』を結成した。  美花は映像クリエイターを目指し、[自滅して死ぬ1分間3Dアニメ]を制作してTikTokにアップし、坂崎はハッキングスキルを磨いて、ネット犯罪を取り締まるエージェントを気取っている。
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