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目を閉じて頬を膨らませ、唇を窄ませてゆっくりと画面に向けて息を吹き込む。
フゥッ〜…………。
少し液晶ガラスが曇るのを薄めを開けて見るが、映像に特に変化はなく、再度目を閉じて頭の中に蝋燭の炎を想像し、小刻みに深呼吸をして心拍数を下げ、何度か画面に息を吹きかけると5回目に画面の炎がフワッと揺れた。
『おっ、反応した』
龍音は微笑んで汗の滲む顳顬のパットを外し、GoodBrainアプリで計測した脳波計のグラフを画面の下に表示し、連動性が増している事を確認した。
高額な脳波測定器は買えないので、簡易磁力器で脳波(ベータ波・アルファ波・シータ波・デルタ波)を解析し、オープニング映像の蝋燭の炎が揺れて、3パターンの映像へ切り替わる連動性を高めている。
・地表から植物の芽が発芽し、成長して果実を実らせる。
・森の湖畔に浮く葉が水面に揺れ、水底から湧き出る泡に誘われてゆっくりと沈む。
・夜の草原に立つ一本の樹木が、月と雲と霧の流れで変化する。
以上の映像をVRゴーグルで体感させるシンプルな睡眠アプリであるが、龍音の理想は脳波と霊波に連動して、魂までも安らぐ極上の睡眠アプリを作成したかった。
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