体験ツアー

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[2028年5月23日スリープダウン・体験ツアー]の看板を持つスタッフが新宿駅ホームに立ち、高齢者の男女が数人集まり、週刊文月(ふづき)のカメラマン梅野孝保が桜井文子の指示で撮影している。  スタッフの中には三笘龍音と安野美花もいて、名簿リストと集まった高齢者の名前をチェックし、スーツを着た曽倉哲人と秘書沢木博美は先に後方のドアからグリーン車に乗り込み、向かい合わせの席に座った。  数十分後、発車時刻のお知らせがあり、9時30分発JR中央本線 特急かいじ11号のグリーン車に深層仮想株式会社のスタッフ六名、週刊文月(ふづき)の記者二名、高齢者男女十名、秘書・沢木博美、御見送り庁大臣・曽倉哲人が乗り、甲府駅に向かって走り出す。 「まさか、私を巻き込むなんて……」と、沢木博美が眉間に皺を寄せ、足を組んで前の席に投げ出し、斜め前の席に座る曽倉哲人が博美を宥めた。 「そう怒るな。僕は秘書を断ったし、君が回されるとは聞いてない。それに政治に興味はないので、御見送り庁が軌道に乗れば、大臣は辞めさせてもらうつもりだ」
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