体験ツアー

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「そうしてください。貴方のお守り役をやらされるとはね。河本のタヌキおやじ、最初から私を鬱陶しい女だと嫌ってたのよ」  沢木博美が総理大臣政策秘書官から御見送り庁の大臣秘書へ降格された恨みを吐き出し、先週号の週刊文月(ふづき)を曽倉哲人に渡す。 「まだ、見てないんでしょ?」 「スリープダウンの完成と、プランの最終調整で忙しくてね」  週刊誌を開いて、トップ記事に目を通す曽倉哲人。鼈甲の丸フレームとメタルフレームの四角レンズの眼鏡は変わらないが、長髪無精髭を封印した美しい顔立ちと、長身細マッチョの体型で高級スーツを着こなす大臣は、王国貴族の雰囲気を醸し出している。 「未だに安楽死というワードを使っている。僕のイメージ戦略が浸透してないのは何故だ?」 「その方が週刊誌の売れ行きが伸び、スリープダウンは試験段階だから、アピールし辛いのよ」
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