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総理大臣アドバイザー
皇居前の大通りを黒のレクサスIS300hが軽快に走り、一台のバイクが後方のトラックに隠れて追跡し、東京駅周辺にあるTOKYO TORCHの駐車場へ入るのを確認し、スピードを緩めて高層ビルを見上げてから地下駐車場へ入り、レクサスIS300hを探して少し離れた位置にバイクを駐めた。
「平本さん。思った通り、沢木博美は誰かに会うようです。記者会見に合わせて秘書官が単独行動するなんて、怪し過ぎっすよねー」
週刊文月の記者桜井文子はフルフェイスヘルメットを外すと、革ジャンの胸ポケットからスマホを取り出し、上司の平本蓮一に連絡した。
「予想通りだな。後は文子に任せたぜ」
「そっちはどうでした?」
文子は小声で話しながら地下通路を歩き、エレベーターの前でランプ表示が二階に停止しているのを見上げ、隣りのエレベーターに乗り込んで平本の長い返答を聞く。
「強化ガラスを爪で引っ掻いた感じだ。番記者を押し退け、河本総理に詰め寄って発言したが、笑顔でバッサリと切られた」
「爪痕も残せずですか。最悪っすね〜」と文子が苦笑して電話を切り、エレベーターを二階で降りて通路を進み、フロアに立ち止まってレストラン「BRIANZA TOKYO」の入り口を眺め、髪と服を整えて歩き出す。
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