スリープ ダウン

高齢者のデータ分析

　龍音は曽倉哲人の説明を聴きながら、『晴明の情報収集能力はそんなもんじゃない』と心の中で呟き、キューブ型のコントローラーに接続したタブレット端末で田中安江の裏情報を覗き見る。

・大腸癌手術（2026年）
・腰痛、通院。
・高血圧の治療薬、睡眠薬。
・趣味　料理、旅行。
・宗教　立正佼成会。

『保険証の通院履歴から、病歴、薬の服用まで瞬時に調べ上げ、趣味嗜好を把握してライフサポートをプランする』

　龍音が操作するタブレットをチラッと見た美花が、ヘッドセットをオフにして「これって犯罪っすよね」と囁き、笑顔で龍音の肩に手を回す。

　AI晴明は厚生労働省、病院、学校から個人情報をハッキングしている。と龍音と美花は睨んだが、友人の坂崎邦彦は『マイナンバーはカードリーダーから、ダダ漏れしてんだ』と笑った。

「不眠症に悩む老人は多いな」
「そうやね。何にしても、晴明は老人の味方」

　龍音は参加者の殆どが睡眠薬を服用している事を確認し、タブレットの電源を切ってヘッドセットをオンに切り替え、プロモーションビデオの撮影に立ち会う。