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 博美はモニターをチェックする三井和馬の隣に立ち、車両の端に立つ龍音と美花も緊張した面持ちで、通路に用意された丸椅子に腰掛けてスピーチする曽倉大臣を注目した。 「おはようございます。御見送り庁の曽倉哲人です。本日、スリープダウンの体験ツアーを開催し、参加者の皆様にスリープダウンを体感していただき、感想やご意見をお聞かせ願いたいと考えています」 [モニター画面・曽倉大臣の背景には軽量VRグラスを装着した高齢者の席と、車窓に流れる風景が映っている。] 「そしてこの旅行を通して、御見送り庁が恐ろしい機関だと誤解されている事を払拭してみせます。私はご老人や病人を死地へ送り出す、死神大臣ではありません」  曽倉哲人は視線を真っ直ぐに向け、瞬きは句読点の区切りに合わせ、心地良いリズムと低音の優しい声で話している。 「スリープダウンはAI晴明がライフ・ナビゲーターを勤め、使用者に生きる時間を見直させる筈です。僕は死を意識する事により人間は自己を見つめ、残りの人生に有意義な時間をもたらすと考え、御見送り庁の大臣を引き受けた……」
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