眼鏡の霊視

2/2
前へ
/70ページ
次へ
 曽倉哲人と沢木博美は元の席に戻り、ヘッドセットを外してリラックスし、スタッフが用意した小型エスプレッソマシンで入れたコーヒーを飲みながら話している。 「今日の仕事は終わりって感じね?」 「喋るのは苦手だし、この後は旅行がメインになる。僕の出番は殆どないよ」 「スピーチ、良かったわよ。それに順調に進んでいるわね」  博美は高齢者がVRグラスに違和感を感じるのを危惧したが、文子にメガネのかけ心地を質問された松永幸子が「とてもいいです」と答える声が聴こえた。 「最高のフィット感を目指したアイテムだ。政府の援助金を増やして欲しいよ」  深層仮想株式会社はゲームとヘルスケア用のVRグラスは販売しているが、スリープダウンの軽量VRグラスは特別仕様であり、製造コストも高額で限定製造している。 「ビル・ゲイツやサンダー・ピチャイも貴方に投資してるって聞いてますけど」 「霊エネルギーを研究していた頃の噂では?スタッフはボランティアです」  哲人は博美の発言に否定もせず、政府の資金援助に不満を漏らして苦笑し、博美は哲人に顔を寄せてヘンテコ眼鏡に手を伸ばす。 「ねっ、その眼鏡で霊を視た事あるの?おばあちゃんが霊視してたって本当なのかな?ちょっと貸して……」
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加