スリープ ダウン

土の香り

　11時04分ＪＲ中央本線 特急かいじ11号が甲府駅に到着し、グリーン車から軽量VRグラスを外した高齢者たちが降車し、スタッフの案内で観光バス乗り場へ行き、出発時間の間に休憩スペースで桜井文子のインタビューを受けた。

「VRグラスで仮想空間の映像を観るのは初めてですよね。怖くなかったですか？不安感とか、気持ち悪くなったりしませんでした？」

「最初は変な感じがしたけど、すぐに慣れました。なんか別世界に入り込んだみたいで、年寄り達が冒険の旅へ出発した。ワクワク、ドキドキの連続だったわ」

　笑顔で答える田中安江のインタビュー映像から、松永幸子、伊藤静子、金井重治、村井省三、瀬尾祐一、菊池伸子、近藤千春、荻野美幸、河野恵美子のインタビューが短く編集されタブレットの画面に映し出される。

「おばちゃんの初体験かな」
「御見送り庁に対するイメージが少し変わりました。もちろん、いい方にですよ」
「正直、映像とは思えず驚いた」
「このツアーに参加した者は多少は死を考えていると思うが、それを忘れた映像体験だった」
「旅行中に毒を盛られたりしてな？まっ、観光が楽しみだ」