血の滴るメインディッシュ

1/2
前へ
/70ページ
次へ

血の滴るメインディッシュ

 文子は梅野とタクシーに乗り込むと、運転手に「急いで、笛吹市芦川町へ行って」と告げ、列車内での三笘龍音と安野美花の会話を思い返し、スマホをバッグから出して梅野に確認する。 「山梨に祖父母が住んでいるって話してたよね?」 「ええ、間違いないすよ。おじいちゃんが入院してるって言ってました」 「高齢者の観光旅行はダミーで、そっちが血の滴るメインディッシュだ。そう考えれば、曽倉と沢木が二人を連れて消えたのも頷ける」  甲府駅に列車が到着する10分前、龍音は美花に田舎の祖父母の家に住んでた頃の話しをして、美花は「ふーん、芦川町か?確か葡萄園をやってたんだよね」と、少し声をボリュームアップして龍音に聴き、文子と梅野へヒントを与えた。  文子はタクシーの後部席でスマホの画面を覗き込み、Googleの検索欄に[芦川町 葡萄園]と打ち込み、数年前に閉園した三笘葡萄園を見つけ、経営者三笘秋生の住所を調べ上げた。 「芦川町25の3番地。運転手さん。三笘って家の前につけてくれる?」 「任せてください。その辺の出身なんで、道は詳しいですよ」  運転手はアクセルを踏んでスピードを上げ、一眼レフカメラを手入れする梅野と、[深層仮想株式会社]をGoogle検索して、社員欄に三笘龍音のプロフィールを見付けて笑顔になる文子をバックミラーに映し出す。 「許可なくスリープダウンを実施したら、曽倉大臣の首は飛び、河本内閣にも飛び火しますよね?」 「三笘龍音がスリープダウンの生みの親って書いてある。アイツら、間違いなくやるわよ」 「特ダネっすねー」 「梅野。しっかり撮るんだぞ」
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加