霊力の発生と変換

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霊力の発生と変換

 龍音は祖母亮子に美花を紹介すると、先に奥の和室に入って簡易ベッドに横たわる祖父秋生の枕元に寄り添い、スリープダウンの手順を説明した。 「お爺ちゃん……」 「おお、龍音か。待ってたぞ」 「ずいぶん、痩せちゃったね」 「ずっと、薬漬けだったからな。婆さんにも話してあるんだが。もう、楽になりたいんよ」 「スリープダウンは不眠症の爺ちゃんと婆ちゃんの為に作ったんだけどさ。まさか、こんな形で使う事になるとはね」 「ふむ、龍音に見送られると思えば、まことに幸せなことじゃよ。それで、どうしたらいいのだ?」 「うん。簡単だよ。ゴーグルをしたら声が聴こえるから、リラックスしてその指示に身を任せればいい。もし、嫌になったらすぐに止めるから、僕を呼んでくれる?」  看護師は壁側に設置したベッドサイトモニターを調整し、亮子は龍音と秋生が和やかに話すのを見守っていたが、中庭側の襖を美花が開けて、暖かい光が薄暗い和室に差し込むと、龍音と美花に手伝って縁側のガラス戸も開け放つ。 「何をするのですか?」  曽倉と沢木と一緒に和室に入って来た山中医師が驚いて質問したが、看護師以外は気にする事もなく、全員で簡易ベッドを持って広い中庭へ運び出し、家庭菜園の畑の真ん中に置いて、スリープダウンの準備を始めた。
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