霊力の発生と変換

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 ジャガイモを収穫した畝にベッドは置かれ、トマト、ナス、キュウリ、パプリカなどの夏野菜が周辺を彩り、秋生は掛け布団を外させれて白いパジャマ姿で仰向けに寝ている。 「畑に埋葬するのか?」 「まさか、生き埋め……」  縁側で呆然と眺めている山中医師と看護師に美花が走り寄り、「妄想すね?」と延長コードを渡し、気を取り直した山中医師と看護師はベッドサイドモニターを畑のベッドへ設置し直す。 「やっと審判がフィールドへ登場しましたね」 「曽倉大臣、冗談はやめてください。畑の上でやる意味があるのですか?」  哲人は笑みを浮かべて山中医師に軽量VRグラスを渡し、隣に立つ博美と一緒に軽量VRグラスを掛けて、意味深なプレゼンをする。(数十秒前、哲人はベッドの横に立つ祖母の霊魂を幻視し、ヘンテコ眼鏡を外して胸ポケットに入れた。) 「土のフィールドは霊力を可視化させるのに最適なのですよ。審判に生から死の世界への変換をお見せし、霊物理学という分野からも、スリープダウンが人類の未来に貢献すると実証してみせます」 「山中医師。私たちはあなたに正統なジャッジを望んでいる。VRグラスで見た情報とベッドサイドモニターのデータが一致し、スリープダウンが正しく行われている事を確認してください」  山中医師は軽量VRグラスを指で摘んでブラブラさせ、「これで御見送りするのか?」と呟き、龍音と美花がベッドの横でケースの中のキューブ型のコントローラーを調整し、痩せ細った秋生が軽量VRグラスを掛けるのを見てから、ベッドサイドモニターの電源を入れた看護師に歩み寄る。
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