Open the door.

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Open the door.

 三笘秋生は龍音に渡されたVRグラスを目をつぶってセットし、仰向けに寝た状態で二、三度深呼吸をしてから、ゆっくりと瞼を開けた。しかし特に視界に変化はなく、真上には青い空が広がり、白い雲がふわふわと浮かんでいる。 「体温、心電図、酸素レベル、すべて正常値の範囲内ですが、血圧と心拍数が高くなっています」 「スタートの緊張感だな……」  山中医師は看護師の隣りでVRグラスに表示される数値と、ベッドサイドモニターに表示される数値の一致を確認して、「VRグラスが同等なら、薬物を注入する針や電気刺激のプラグは見当たらない」と首を傾げ、垣根越しに中庭を眺める文子と梅野の姿を見て呟く。 「精神的ショックで御見送りするのか?いや、苦痛の死に顔を晒せば、マスコミの餌食になり、曽倉大臣は弾劾されるだろう」  週刊文月(ふづき)の記者・桜井文子と梅野孝保はタクシーから降車すると玄関へ急いだが、中庭に集まる人影を見つけて、垣根の戸を開けて無断侵入し、梅野は一眼レフカメラを構えてシャッターを切り、文子は曽倉哲人へ走り寄って叫ぶ。 「やはり無断でスリープダウンを始める気ね。私を出し抜けると思ったら、大間違いよ。もし不審な点があれば、貴方を殺人者として告発します」
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