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曽倉哲人は名刺を受け取って神妙な表情で大臣就任への訓示を拝聴していたが、途中で肩を竦めて博美に顔を寄せ、あらぬ方向へ親指を立てて囁く。
「博美。スパイがいるぞ」
「えっ？」
驚いて顔を向けたタイミングで、少し離れた席のショートヘアの女性が顔を上げ、お互い視線を合わせて固まり、哲人が間を取り繕って喋り出す。
「河本聡太郎は失敗を想定し、僕と君に責任を押し付けて権力にしがみ付く筈だ。この際、メディアとも仲良くして、急ピッチで進めて行こう。革命には馬鹿騒ぎが必要だからね」
数分後、週刊文月の編集部に桜井文子からメールが届き、平本蓮一がノートパソコンの画面に添付された写真とメール文章を映し出して驚愕する。
【写真：水色のパーカーを着て正面を睨む、ロングヘアに無精髭のプロフィール写真。犯罪者かハリウッド俳優か？】
曽倉哲人 42歳 物理学者及び起業家。東京大学経済学部卒後、アメリカの某大学院准教授となり、霊物理学の研究を経て二年前に日本に帰国し、深層仮想株式会社の代表取締役に就任する。
この度、御見送り庁の労務大臣の候補となり、就任した際には『スリープ・ダウン』というVRアプリを採用して、安らかな眠りへ誘う仕組みを作り上げたいと考えています。（インタビュアー・桜井文子）
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