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ヘンテコ眼鏡
桜井文子は週刊文月の名刺を沢木博美と曽倉哲人に渡し、御見送り庁・国務大臣発表前に記事を出さないという条件で、短時間のインタビューと今後の単独取材を許可され、取り急ぎ上司の平本蓮一にメールし、詳細は本社へ戻ってから報告すると伝えた。
「じゃ、すぐ戻りますので、平本さんもソクラテツのYouTubeを観といてください」
「ソクラテツ?」
「ええ、世紀末のカリスマっす。コアなファンが世界中にいて、日本の若者層にも大人気なんだよ」
「オジサンにはわからなーい」
「私も初耳で〜す」
文子は電話を切って席から離れたが、食後のコーヒーを飲みながら沢木博美と談笑する曽倉哲人を見て、ずっと気になっていた事を聞いてみる。
「そのヘンテコ眼鏡、大臣になっても変えないんですか?正直、話に集中できなくて困りましたよ」
沢木博美は「そうよね」と頷いたが、理由を知っているのか強制はせず、無視して手を振る曽倉哲人に「髪はバッサリ切るのよ」と念を押す。
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