陶器のはしおき

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 僕は、散歩中にたまに通っている道を通った。  そこには一軒のお店があった。「そういえばこんなお店があったな」僕はそう思った。たまに散歩で通る道だから周りをよく見ていないこともあって久々にみて思い出したのだ。中に入ってみるとそこは陶器の小さなお店でいろんな陶器の食器があった。カラフルで可愛らしい感じだ。 「いいお店だな」そう思って僕はお店をあとにした。  僕の家は妻の里美と10歳の息子の優人と僕の3人家族だ。僕は優人になにか買ってあげたいと思って、「なにかほしいものある?」と聞いた。そしたら優人は「はしおきがほしい」と言った。「なんで?」って聞くと、「今使っているのはアンパンマンの絵柄が入っているからもう使いたくない」というのだ。  そうだったなアンパンマンはもうこの年になったら恥ずかしいよな。そう思ってそういえばはしおきはあの陶器のお店にもあったなと思い、そこにみんなで行くことにした。  3人でお店に入ると優人はまっさきに、はしおきの置いてある場所まで行った。そしてすみずみまでながめながらその中で気に入ったものを手に取った。  そのはしおきは有名な職人さんがデザインしているらしく2000円もした。優人はそれを見て「ほしかったけど高いからいい」と言った。僕は「買ってあげるよ、気にしないで」と言った。それでも優人は「いい」と言って、ほかの陶器を見出した。  僕は少し悲しい気持ちになった。  僕は優人に「お金はたくさんあるわけじゃないから無駄遣いしないようにね」と教えていた。そのせいか、本当にほしいものがあっても高いと「買わない」と言うようになったのだ。  実際なんでも買ってあげられるほど僕の給料は高いわけじゃないけど・・・。  そうしてお店を出ると、優人は「今日の夜ご飯はなーに?」と里美に聞いた。「カレーだよ」と里美が答えると、「やったー」と言って喜んで走って家に向かった。  僕はなんだか虚しい気持ちになった。  その夜僕はベッドで昔を思い出した。お父さんに欲しい物を買ってもらえない自分。そんな思いは優人にさせたくない。そして次の日、またそのお店に一人で行くことにした。  僕は昨日と同じ道を通った。その途中であの陶器のお店がまた姿をあらわした。そこにはやはり優人がほしがっていた陶器のはしおきがあった。僕はそれを手に取ると、「これください!」と店主に言った。  僕はその陶器のはしおきを受け取ると、お店の外に出た。  僕は少しニコッと笑ってお店をあとにした。
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