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『そして、よだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。今でもまだ燃えています』
お母さんは私が持ってきた絵本をぱたんと閉じた。
「よだかよかったね。きれいな星になれたね」
星空にまたたくよだかの星を想像しながらうっとりとつぶやく私の髪をひとなでして、お母さんは窓の外にめをやった。空に浮かぶ星をみようとするように首をかたむけたけどまだ空はまだ明るくて星はひとつも見えない。
「そうだね。でも、できればよだかはよだかが思うままのよだかで良かったなってお母さん思うな」
そう言って、こぼれたことばにお母さん自身がおどろいたように唇にふれた。
「みにくいっていじめられたままぁ?」
そんなの嫌だと私は顔をしかめた。
「うーん。ちょっと違う。みんなが言う<よだか>は」
お母さんが言いかけたとき、
「前田さーん。そろそろ準備しましょうか」
病室に看護師さんが入ってきた。
「はーい! お願いします。あかり。外で遊んできな。お父さんがアイス買ってくれるよ」
ぽん、と軽やかにお母さんは私の背中をたたき、私は「アイス!」と叫んでかけだした。お母さんが手術を受ける直前のこと。私がお母さんに会ったのはそれが最後だった。
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