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行き交う年もまた旅人なり
と芭蕉は詠んだが
旅人はまるで書き割りのようで愛想が無い
ただ無駄に生きる夜にも
月は登り
命を冷やすのに余念の無い
尖った夜を暖める
今宵
一際 大きな弧を描く鏡
慇懃無礼な闇を諫める神
夜の保護者
「月が無けりゃこの惑星なんて
とっくに逝ってたんだよ。」
こんなに綺麗に見える正球体が
実は歪みのある球体で
表面もボコボコに傷ついている
そんな事は…
誰も気にしてない
「この路地はいったいどこまで
続いているんだい?」
昨日の影が私に尋ねるが
私は黙りを決めこんだ
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