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渇き切った冷気が肌を撫で
身体が縮み上がる
北風が粉雪を運び
頬に冷気が刺さり耳は既に感覚がない
大きな月は私の眼には どう見ても
月の正線に対して左右対称の満月だった
粉雪にはきっと
その正線が見えないのだろう
粉雪の動きは自由だった
長い長い長い路地には
ところどころ他の路地と交わる辻がある
路地を過ぎるバスが見える
バスも此方を見ながら通り過ぎた
ああ あのバスに間に合えば良かったのか
辻から覗く男もいる
店先で微笑む女も店主もいる
ただ此方が間に合わないと判ると
皆、寒さに耐えかねて
笑顔を棄てて建物の中に入って行った
あー、そうそう
何回もすっ転んだだった
今頃 思い出す
手も悴んでる
何故 手袋して来なかったんだろう?
ふふ。後の祭り。か。
後悔なんて
何の役にも立たない
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