正月

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少しずつ 笑顔を失って 少しずつ つまらない大人になった そう自分なんて  このまま凍えてしまえばいい もう自分なんて 壊れてしまえばいい 心身に深々と雪が降り積もる 「自分を諦めたら生きる意味なんてない」 「この路地はいったいどこまで 続いているんだい?」 明日の影が私に尋ねる 「終わる事などないさ。この路地では 輪廻転生を繰り返す。終わるようで終わらない。」 一昨日の影が代わりに答えた 路地のあちこちから  美味そうな夕餉(ゆうげ)の薫り 凍え凍えた身を引きずって 立ち寄る扉の無い事を 思い知りよる 夜の路地 「いったいどんな悪い事をしたのだ?」 「多くの人を殺した」かもしれない 「多くの人を騙した」かもしれない 「それなら 今生は報われない」 かもしれない 「いやいや  もともと魂が腐っているのだろう」 そうかもしれない 「それなら金輪際報われない」 そうなのかもしれない
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