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「まぁ…落ち込むな。これ以上罪を犯さなければこれ以上酷くはならない」
それには この俺も強く反駁した
「馬鹿じゃないの!人は苦しくて苦しくて、しょうがなくて罪を犯すのさ。幸福に包まれた人間が罪を犯す訳がないじゃないか!」
「そら、それが腐った魂の考えさ。基督を観てみろ。人類の苦しみを一身に背負って死んだじゃないか?」
また遠くの辻を通り過ぎるバスと
目が合った
また遠くの辻で俺に微笑む女や男
「馬鹿だ!」
俺に聖人になれってか?
そんな要求するのが神や仏なら
神も仏もこの夜に要らない
俺は愚か者の生を受けて
この夜に生まれたんだ
人を羨み
人の欲しいと思うものを欲しいと思い
手に入らなければ
人を妬み人を恨み
そんな愚か者で生まれたが
そんな愚か者すら救えないなら
神も仏もあったもんじゃねぇ
たいした仏力も無ぇよ
だけどこんな愚か者でもよぉ…
誰かが泣いていたら悲しくなるし
誰かが明らかに理不尽な状況でも諦めず踏ん張っていたら…
心の底から悲しみが湧いてきて
鼻の奥がツーンと痛くなって
瞼の奥から
しょっぱい涙が溢れて来るんだよ
神や仏なんかより
ずっと優しくなれるんだよ
神や仏なんかより
ずっと悲しい人間に寄り添えるんだよ
だから
この路地があとどのくらい続くか
解らないけれど
俺は悲しい者に寄り添う詩を
詩うのさ
寒い夜に明かりを届ける月の夜に
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