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あわわ……と訪れる破滅の予感に俺が本気で焦っていると、にっこぉと効果音がつきそうなくらい笑顔を浮かべて颯斗が名乗った。やっぱ怖い。
「……漣颯斗です」
「ふーん、颯斗君、ね。要君と同じクラスなの?」
「いいえ、一つ下ですよ?幼馴染なんです」
気のせいか颯斗が異常に幼馴染を強調している気が……そんなに俺と同級生だと思われるの嫌?泣いちゃうよお兄さん。
「そっかそっか……へぇ…」
鬼頭さんは鬼頭さんでなんかやけに含みのある言い方してきて怖い。空気死んでる……誰か!助けて!!
「じゃあ僕は颯斗のおにーさんだね!えへへ」
「そうですね、先輩ですよね」
「あっはははは、俺ちょっとそろそろ帰らないとなぁ!!」
一刻も早く空気を改善すべく引き攣り笑いを浮かべながらわざと大きな声で主張すると、二人がパッとこちらを見る。颯斗は俺に同調するかのようににっこりと笑ったが、鬼頭さんはその逆で少し不満そうにしていた。
「………もう帰っちゃうの?せっかく楽しかったのに…」
「はうおぇあっ!!!」
しゅんとした可愛らしい尊顔に俺は一発でノックアウトした。うん、安定の可愛さっ!!満点です!!
「鬼頭さん家どっちすか?」
「……あっち。ね、鬼頭さんはやだ。薫って呼んで」
「あ、はい薫さん……あっちすか、じゃ方向同じなんで一緒に帰りましょう」
「いいの?!やったぁ!!」
えへへ、と嬉しそうに頬を緩めるきと……薫さんに俺はああ生まれてきて良かったとオタクを全開にした。悪役な薫さんもかっこいいっちゃかっこいいけど、颯斗を苦しめるとこがちょっとやだったし何より今のピュアピュアな感じが可愛すぎる。え、もう頼むからこのまま育ってほしい。
「……んぇ?」
薫さんが良い子に育つように神様に祈ってたら、右手に温もりを感じた。視線を落とすとあらら、なんと颯斗と手を繋いでいるではありませんか。え、ざんねーん、神聖力的な何かに目覚めたと思ったのに。
なんて言うと思ったか!|!!
「え、……ええ?」
颯斗君何ですかこれは。急にされるとすこぶる心臓に悪いんですが??推しと手を繋ぐとか完全に俺得案件だけど。
疑問に満ちた顔で颯斗を見るが、颯斗はにっこり爽やかスマイルを送るだけだった。ねぇ、もうそれモノにしてない?なんかそれやっとけば何とかなるみたいな感じになってねぇか?んん?
が、俺は颯斗の顔面に、というか颯斗自体にめちゃくちゃ弱いので何も言い返せませんでした。うん、今日も推しの顔面で白米5杯は食える。
ぎゅー、と割と強めの力で握ってくる颯斗に俺はいっそ微笑ましい気持ちになり、思わず感動した。
ああ、ようやく颯斗にも子供らしい心が芽生えたんだ…うんうん、訳もなく手を握りたくなることってあるよな!颯斗もやっと普通の小2に──
ボソッ。
「……手錠とかあったら、もっと良いんだけど」
前言撤回。
一瞬にして俺破滅案件になったわ。
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