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「まぁ冗談は置いといて……」
きりりとした顔を元に戻して、えっふんと咳払いした高身長じゃない方…さっき呼ばれてた名前だと、丁嵐さんが俺たちをチラリと見る。
「一体これはどういうこと?って聞きたいとこだけど、そこの君」
「あ、はいっ!?」
急に視線を向けられて背筋をピンッと伸ばしたまま返事をすると、真面目な顔をした丁嵐さんが髪の毛とお揃いの新緑色の瞳で見つめる。
「君は目に見える怪我が多いし、話を聞く前に保健室に行くべきだね」
「あ、いや俺結構平気なんで大丈夫ですよ?」
「あーダメダメ、そんな殴られましたみたいなほっぺで風紀室行っても俺達が鬼みたいに見られるだけだから」
え、そんな派手に腫れてんの俺の顔。傷とかないからそんな重症じゃないと思ってたけど。そう思ってそっと顔を触ると、確かにほっぺたが鈍い痛みを訴えた。お、おう、ちょっと痛い。
少し眉根を寄せた俺に、そうだろうそうだろうと頷いた丁嵐さんは思い付いたかのように彗先輩にも視線を向けた。
「アレなら彼氏くんの氷室も付き添い的な感じでついてっても良いよ?」
「かっ………彼氏じゃ、ねぇ...」
「あ、そーなん?てっきりもう通じ合ってんのかと思っちゃった」
先輩先輩、否定するならもっとでかい声で否定してください!!!俺みたいなモブが先輩と恋人同士なんて思われるのは烏滸がましすぎるんで……顔真っ赤にされるとあの、可愛いんですけど俺まで照れてしまうと言いますか、うん。マジっぽくなっちゃうからね、うん。
目を丸くしながら俺たちを交互に見る丁嵐さんと赤い顔でそっぽ向く彗先輩。そんななんとも言えない空気に包まれて居心地が悪くなっていると、それをぶち壊すように先ほど少し離れたとこにいた高身長イケメンがツカツカとこちらに歩み寄ってきた。
「丁嵐」
うおっ、良い声。
丁嵐さんの後ろから聞こえた心地よいテノールに反応して高身長イケメンを間近に見る。瞬間、俺は叫びそうになるのを堪えて瞠目した。
さっきは少し遠いのと、彗先輩の肩越しだったのでよく見えなかったが、この人も『破滅』キャラじゃねぇか!!!
この高身長堅物イケメンの名前は、神崎千隼。
まるっきり『破滅の一途』のキャラである。
黒寄りの紫という珍しい髪色にアメジストみたいな瞳が神秘的で美しい。そんで当たり前みたいにまつ毛もバサバサである。いいか、まつ毛はイケメンの条件だからなみんな。これテストに出るぞ。目元は引き締まっていて厳格さを感じる。
身長は目視で多分190近い。足が長くて、両手に真っ白な手袋をつけている。雰囲気もあってかここの制服も相まってか騎士みたいだ。
彼は王道学園でいう真面目堅物風紀委員長に当たる。俺はそこまで王道学園ものに詳しいわけじゃないからそんなに知らないが、王道学園風紀委員長というと大体真面目で堅物なタイプか、もしくはワイルドなつよつよ委員長のことが多いらしい。ワイルドイケメンは薫さんという大物が『破滅』にはいるから、彼の場合は前者だが。
大体の設定は王道学園と一緒で、生徒会と風紀の権力はほど同じだとか、生徒会と風紀は仲悪いとか、まぁ色々だ。破滅には王道転校生が存在しないので生徒会も風紀も族に所属してるとかそういうきな臭い話はないけれど。族っていうか、ヤクザなら薫さんという最恐の方がいらっしゃるがな、うむ。
で、この人は作中どうやって登場したかというと、基本的には犬猿の仲である生徒会の会長、天満來杜絡みで一緒に登場することが多い。多分、生徒会が暴走した時に出てくるか、学園内で問題が起きた時に出てきたような気がする。最近記憶が定かじゃないのであんまり確かなことは言えないけど。とにかく、主要なストーリーにガッツリ出てくることはない。
ただ、作中颯斗の危うさに気がつき陰で颯斗を警戒していたかなりの切れ者という描写もあるので出来る人というのは間違いない。
あと、普通にこれはファンの中で勝手に祭り上げられていたことだが、彼は『破滅』において3大イケメンとして名高い。颯斗、会長、風紀委員長、というビッグネームというわけだ。薫さんが悪役じゃなければ薫さんも入って4大だったかも。当時の俺は彗先輩が入ってないことにやや憤慨していたので薫さん人気についてはそこまで詳しく調べてないけど。
それはそうと、今はまだ原作の一年前だから彼は風紀委員長じゃなくて、ただの風紀委員なのか。道理で直々にお出ましするわけである。んで彗先輩と同じ学年だから2年か、今。その2人にタメ口の丁嵐先輩も同学年っぽい。
「立ち話ばかりするな。お前は他の委員と一緒に血まみれの関係者共を運べ」
「ハイハイ分かりましたよー……あー神崎サマも運んでくれると俺が嬉しいんだけどなー」
丁嵐先輩が棒読みでそう皮肉を垂れるが、神崎先輩は全くの無表情で俺たちを一瞥した。
「俺は彼ら二人を保健室に送り、全員の身元を特定する仕事がある…それに、アレらに触れるのは避けたい」
アレら、と言った先には血まみれの不良たちが居て、ああそうかと俺は勝手に納得する。神崎風紀委員長は潔癖症という設定がある。他人に触れるのが苦手で、だからいつも白い手袋つけてるんだった。そのおかげで真澄との接点もあんまりないし、颯斗的にもブラックリストに入れるほどの憎しみの対象でもなかったようである。
まぁ、一応容疑者ではあったのと、颯斗の殺戮計画を止めに来たってことで殺されはしましたけれども。颯斗が本当に容赦なくておにーさんは泣きそうです。ちゃんと俺が真澄暗殺を止めるからそんな酷いことはしないでくれ…。
「手袋つけてるから触れるだろうに…まぁいいや、全て神崎様の仰せのままに、と」
丁嵐先輩は少し微妙な顔をしながらも、不良を軽々と持ち上げて米俵みたいに担いだ。他の委員の人を見ても同じで、みんな特段苦労することなく不良を持ち上げている。す、すげぇ!!結構ガタイいいのにあんな軽々と持つなんてやっぱ鍛えてるんだなぁ、風紀委員って!!俺も筋トレ……がんばろ。
「行こう。ついてきてくれ、保健室まで送る」
憧れの目で風紀委員を見ていると、神崎先輩が無表情のまま俺と彗先輩を促したので慌ててついていく。と、そこで突然彗先輩が俺の手首を掴んできたのでびっくりして見上げた。
「………迷子防止だ、馬鹿」
ちょっと怒ったような、照れたようなそんな顔で一言言われてしまい、俺は目を瞬いた。
迷子、防止。
え、俺何歳に思われてんの?
いや確かに初日は色々迷って先輩に手を引いてもらったりはしたけど、流石に俺とて記憶力というものがあるので来た道くらいは覚えているし、ちゃんと案内があればそれに従うので大丈夫なんだけど。
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100ページお祝いコメントありがとうございます!!!!びっくりです(/ω\*)
人気投票しても良いですよ〜という温かいお言葉を下さった方がいらっしゃったので、この章が終わったところで第1回人気投票をしたいなーと!!!
まだ出てきていないキャラがそこそこいるのでその辺はあれですが、とりあえず1回目をしたいという野望が燃えてます!!開催時は良ければぜひご参加下さい!
いつもありがとうございます!
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