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※めちゃくちゃ急いで描きあげた作者の棗くん雑絵が下にあるので自衛お願いします
※久々なので誤字あったらすみません 作者は時代遅れのコロナになっておりました(т-т)
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ぬぅうんと梅干し食べたみたいな渋面で体型の危機を感じる俺に先生は、ん?と小首を傾げていた。くっ、癒し。
そ、そうだ、俺は先生の顔を曇らせたりしないようにもらったものをありがたく頂戴してるだけだし???べ、別に食い意地張った末のお菓子の食べ過ぎとかじゃないし???然るべき場所(胃)に納めてるだけだからな、ふはは!!
………ま、まぁそれはそれとして運動はちゃんとしますけども。勘違いしないでよね!!太るからとか気にしてるんじゃなくて、健康な生活を目指してるだけなんだからねっ!!!
なんて誰に言うでもなく心の中で言い訳していると、そうだ、と先生が何かを思い出したように口火を切った。
「もうすぐ新入生歓迎会だけど、要くん達一年生はもう何か説明とか受けたのかな?」
「……新入生、歓、迎会?」
ぽげ、とアホ面で先生の言葉を鸚鵡返しにする。多分今世界一間抜けな顔してると思う。
新入生、歓迎会。新入生歓迎会ね。ほうほう。うん……
ああああっっっ!?!?
ちょっと待って、あったなそんな行事!!新入生歓迎会って王道学園最初の学校行事にして言わずもがな『破滅』でも重要な役割してた一大イベントじゃんっ!?俺なんでこんな大事な行事忘れてたんだ!!!
最近、この世界で原作舞台の幽谷学園通い始めた影響なのか、前世の記憶というものが俺の頭から薄れつつある、らしい。よく転生ものとか二次創作もので見る二次元世界に染まるみたいな現象がついに俺のようなモブにも現れてるってわけだ。なんてこった、まだ原作が始まる時空にもなってないのに自動で記憶が失われるハード仕様。
しかしそのハード仕様のおかげなのか、記憶が薄れている速度はかなりゆっくりなようで、思い出そうとすれば思い出せることも多々ある。まぁ、たまに思い出せないんだけど、でも大概の原作知識はちょっと思案したらなんとなく思い出せるので近いうちにノートかスマホのメモに留めようと思ってる。ごめんなベタな方法で。
おっと話が脱線してしまったので、話を新入生歓迎会に戻す。
王道学園の新入生歓迎会っていうのは生徒会が企画したイベントだけど、大体の定番が鬼ごっこなのが特徴だと思う。貴族みたいなお坊ちゃんばっかり生徒会メンバーなので鬼ごっこなんていう可愛らしい庶民の遊びが珍しいのか王道学園といったら鬼ごっこと決まっているまである。
でもまぁ規模は全然可愛くないんだけど。鬼側と逃げる側に生徒を分けるという点は大体同じだけど、新入生が鬼になるパターンと生徒会メンバーを中心にした上級生が鬼のパターン、そして鬼か逃げる側かはくじ引きで公正に決めるパターンとまぁ作品によって色々ある。あと捕まったか判断するための手段が最新のハイテク腕輪だったり、古典的だとハチマキだったりもする。
そうそう、これが大事なことなんだけど、鬼は捕まえた人の中から選んで一つだけお願いができるんだよな。で、反対に逃げる側の人も最後まで誰にも捕まらなかったらお願いができる仕組み。でも鬼よりも逃げ切ることの方がむずいからこっちは別にお願いできる相手に制限がない。
生徒は自分の推してる生徒とか、好きな人にお願いするためにめっちゃくちゃ頑張るって寸法なんだけど…なんかアイドルとの握手会参加券を巡るサバイバルみたいだよなぁこれ。まぁ推しに会えるならって必死になる気持ちは分かるけど!!遠くから見るだけでも、同じ空気吸えてるってなって昇天くらい尊いもんな。推しの力は偉大、推しは万薬。これ常識。
幽谷学園の鬼ごっこは原作と変わりない場合、鬼と逃げる側を決める方法はくじ引き、生徒はハイテク腕輪を着ける、の二つが搭載されている。この学園はやっぱお金あるからね、うん。ハイテク腕輪を人数分用意するなんて造作もないんだろう、知らんけど。
「要くん?大丈夫かな?」
情報処理しながら百面相していたら先生に窺うように顔を覗き込まれてしまった。俺としたことが白衣の天使を放置したまま別世界に行ってたらしい。慌てて取り繕うように先生に質問してみた。
「新入生歓迎会の説明とかあるんですか?」
「うん、あと1週間ちょっとで本番だから1週間前には係から説明があるんじゃないかな?要くんはこの学園の鬼ごっこについては知ってるかな?」
「あっ、なんとなく友達に教えてもらって……くじで鬼と逃げる人を決めるって」
本当は知ってるから嘘なんだけどそれらしく言葉を濁して頬を掻いた。ちょっときまり悪いけど仕方ない。
先生は特に怪しむ素振りもなく小さく頷くと持っていたカップを置いた。
「そうそう。それで、くじで鬼か逃げる人か決めたら生徒会が全校生徒分の名簿とその横に鬼なのか逃げる人なのか一人一人の役割を貼り出すんだ」
「えっ!?」
そうなん!?!?
いやそれ生徒会めっちゃ大変じゃねとかそんなん貼っていいのかとか色々ツッコミが追いつかないんだけど、なんでそんなことを…?
「ほら、生徒達はみんな自分が好きな人気の高い生徒に対してお願いをしたいから、彼らが自分の好きな人が鬼なのか逃げる側なのか知るために生徒会が毎年まとめて貼り出してるんだよ」
な、なるほど……その名簿見て自分が逃げればいいのか追いかければいいのか決めるってわけね。人気生徒って大変だな…めちゃくちゃたくさんのファンから逃げないといけないし…もし鬼になっても自分の好きな人捕まえたら炎上()しそうだし。
「要くんは誰かお目当ての人はいるのかな?」
「え、俺ですか?いやー俺は特にそう言う人はいないかなぁ…」
だってだって、俺もう推し2人も身近にいるもんね。最推しの颯斗は今は学園にいないけど繋がりあるだけで満足だし、何より学園には彗先輩がいるからな!!あと薫さんや神崎先輩と言った人気どころも見れるというベストポジションにいる。俺は2人は推しじゃないけど、破滅ファンなので結局どの人も好きだし、この世界に来て関わるうちに前世より好きになった自信がある。薫さんはワイルドで意外と優しいし、神崎先輩は男前で誠実だし。
だから別に誰かにお願いしたいという感じではない。まぁ強いて言うなら食堂の無料券はちょっと羨ましいかも。俺は一応成績優秀者ということになっているので食堂のご飯は半額だが、特待生と違って無料ではないのである。金銭の負担はあんまり父さんと母さんにかけたくないんだよね…成瀬家意外とお金持ちなの知ってるけど。それでも俺は棗のためにお金は取っておいてもらいたいし、何があるかわからん世の中なので備えておくのは良いことだ。
「そっか…それなら鬼の方が自由にできて合ってるかもね」
「ですねぇ…」
くじで鬼が引けるといいね、とにっこり笑う先生にはい!!と元気よく返事をする。先生曰く鬼か逃げる側か分けるくじは明日各クラスで開催されるそう。多分説明もそこでされるんじゃないかって。俺は明日鬼側を引けばいいというわけである。ふっ、2分の1なら余裕だな!!!
しかし俺は忘れていた。
この世には『フラグ』というものが一瞬で乱立するのだということを…。
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少し遅くなりましたが、感謝感謝です……
お祝いしてくださった方、ありがとうございました🙏感動で咽び泣きました
更新は大遅刻です。
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