まずは良好な関係から作ろう!(前途多難)

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「お前女みたいな顔してるくせに生意気なんだよ」 「ちょっと頭良いからって気取りやがって」  やいのやいのといじめている5人が悪口を叩く。囲まれている方は何度か果敢にも挑んだのか、顔に痣ができていた。そばには眼鏡が落ちていて、踏みつけられて形が変形している。  見た目は大分違っているが、間違いない。彼は『破滅』に出てくる主要キャラだ。  名前は、鬼頭(きとう)(かおる)。  整いまくった顔立ちに面影があるので何とか分かったが、多分普通ならよく分からないはずだ。今は眼鏡をかけた女顔のガリ勉キャラっぽいが、小説内では全く違う。  まず、眼鏡はかけていないし髪はバチバチの金髪。ピアスもジャラジャラの典型的な不良として描かれている。彼は極道の息子であり、そのことを利用して学園の不良の頂点に立つ最恐の男だ。  颯斗との絡みはあまりないのだが、学園内では問題児扱いされており颯斗の恋人が殺されたとき真っ先に疑われたのが鬼頭。いわゆる悪役に相当するだろう。はっは、なのに俺の方が死ぬの早いっていうね。もう作者絶対俺のこと嫌いだよね?  しかし、何があったらいじめられっ子があんな不良のボスになるんだ……めっちゃ眼鏡の真面目を絵に描いたみたいな子じゃんか。同じ学校だなんて初めて知ったわ。  少し準備運動をする。流石に見て見ぬ振りは出来ないよなぁ。 「颯斗、ごめんけど先帰って」 「え?」  言うが早いか、俺はランドセルを前に構えて公園内に突撃した。  5対1は、卑怯でしょうが!!!ランドセルアターック!!!  とりあえず一番強そうな男子に体当たりしてみた。確か、鬼頭って上級生だよな。原作では三年だった気がする。ということは俺より一つ上だから、このいじめっ子たちも年上か。 「う、うああっ!!」 「みっ、宮部っ!!」  一気にいじめっ子たちが騒ぎ始める。俺が倒したデカいのは一番喚いていた。やっぱりこいつがボスだったのか、一番偉そうにしてるから分かりやすかった。 「おにーさん達、流石に多勢でよってたかって一人をいじめるのは関心しないなー」  いやまあ、一人でいじめんのもダメだけどね。  ランドセルを掲げながら、倒したボスみたいなやつににっこりスマイルをお見舞い。俺の心情を翻訳すると、『テメェら、クソモブの分際でしょーもねぇことして俺の好きな『破滅』キャラ虐めてんじゃねぇぞ』ってとこだな。俺の大好きな世界で主要キャラ虐めてんじゃねぇ崇めろ!! 「ひっ!何だこいつ、何でこんな殺気が」 「宮部倒すとかただもんじゃねぇよ!」 「に、逃げろおっ!!」  チンピラそのものだなおい。  俺の原作への愛が伝わり、いじめっ子達は尻尾を巻いて逃げた。倒したボスみたいなの他の4人が引きずってるのウケる。  いやー、ランドセルアタックが思ったより効いたなー。俺実は喧嘩とか嫌いだからあのまま殴り込まれてたらやばかった。ボコられてたかもしんない。いや、それはないな。え?何様?俺様何様要様だけど?あごめんなさいごめんなさい調子乗りました殴らないで!! 「要!」  たったった、と軽い足取りで颯斗が駆け寄ってきて、何やら怖い顔で全身をチェックしてくる。なんやかんや待っててくれるの優しいわー。でもこれ何?点検? 「え、あの、颯斗サン?」 「じっとしてて今怪我ないか見てる」 「や、ランドセルしか使ってないから大丈夫だって」 「気づいてないだけかもしれないから」  え、ええー。颯斗が急に過保護。何?俺の実験体だから死なれたら困る……みたいなこと!?怖い怖い。 「あ、あの……」 「あ」  俺としたことが、助けたのに鬼頭君のことをすっかり忘れていた。今は上級生だから鬼頭さんのがいっか。 「ごめんなさい!!どうぞ!!」  慌てて手を差し出すとビクッとして鬼頭さんが縮こまる。え、あ、ごめんなさい、俺怖い? 「あ、すんません」  馴れ馴れしかったか、と思い手を引っ込めようとすると、遠慮がちに手を握られた。そして照れ顔+上目遣いで一言。 「あ、ありがとう」  その瞬間、俺の頭部は爆発した。説明しよう、俺の頭部は萌えを食らうと爆発するようになっている!!  いや多分嘘。比喩だよ比喩……へへっ(意味深)。 「はいきた神ィ!!生まれてきてくれてありがとう!!全俺が歓喜!!」 「え?え?」 「気にしないでください、よくあるので」 「よ、よくあるの……?」  颯斗がちょっと俺を嫌っているっぽいなおい。  よくあるのでじゃないよ!!よくあるけど!!!
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