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詰みでしかない
突然だが俺、成瀬要は5歳の誕生日の今日、階段から落ちて強く頭を打ち、その弾みに前世の記憶を思い出した。
信じられないかもだけど、思い出した。
俺は前世でしがない腐男子社会人としてひっそり生きていた23歳だということを!
ちなみに腐ったのは上に同じく腐った姉がいたからdaze。俺自体は基本二次元の腐を見るのが趣味のノンケだから出会いなんかなかったけどな!!彼女もいない悲しい社会人でしたわ。別に社畜じゃないけど、でもまあ寝て起きたら会社行って帰って寝て起きてを繰り返すような、単調な人生を送っていた。
確か、会社帰りに地下鉄の階段から落ちて死んだんだよな……って、また階段かよ。呪われてんのかな俺。
でもまあ、それなりに普通の生活をしていたわけで。
そんな俺のささやかな楽しみはもちろんB L漁りだったわけだけど、その中でも当時どハマりしてたのが『破滅の一途』というBL小説。
学校や家では爽やかで心優しい好青年を演じている主人公、漣颯斗には実は何にも興味が持てないという冷めた一面があった。颯斗が唯一興味を持っているのは、生き物が感じる苦痛。成長するごとにサイコパス味を拗らせていく颯斗だけど、高一で運命的な出会いをする。その後恋人(男)ができた颯斗はようやくそのお陰で人間味を取り戻して、小さな幸せを大切にするんだけど、ところがどっこい、なんとある日愛する恋人が何者かに殺されてしまう。
このことがきっかけで颯斗はサイコパスを加速させ、恋人のための復讐を始める___というのが『破滅の一途』のあらすじ。
俺はこの小説にどハマりして、コミカライズされた漫画まで買うほどの熱狂的なファンだった。
……まあ、前世での話だけど。
で、そのBL小説が何だよって話だけど、単刀直入に言えば今世の俺、成瀬要はこの『破滅の一途』に登場するキャラクターだ。主人公の幼馴染という役で出てくる、一個年上のお兄さん。
彼は小説の中では小さい頃と高校時代に少し、くらいでしか登場しない脇役で、ほとんど重要なシーンなんてない。漣颯斗の日常の彩りとして少し話の展開上顔を出すだけの、脇役だ。完全なモブ。
そして、作中で一番最初に颯斗に殺されるキャラ。
それが俺、成瀬要。
うん。
うん。
うん。
………え、何これ詰んでね?
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