まずは良好な関係から作ろう!(前途多難)

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がいちゅうごっこ? ……え?   んん?   お? ちょ、え? 何?俺の聞き間違いか何か? ……ま、待て待て。 うん、俺が知らないだけでがいちゅうっていう遊びがあるのかもだし?そういう名前のキャラクターがいたりするのかもだし?ぴ、ピ○チュウ的な。 決めつけはまだ早いよな、うん。 「……えーと、ごめん、おれ、そのあそびわかんないんだけど、どんなごっこなの?」 引き攣りそうになる顔面を叱咤して尋ねると、颯斗はもう清々しいほどいい笑顔を浮かべた。そうして、ニコニコしながら流暢に説明を始める。 「がいちゅうごっこは、ぼくがかんがえたあそびなんだけど、」 「う、うん」   「がいちゅうっていうやくと、にんげんのやくにわかれて、」 「……うん」 「にんげんやくが、がいちゅうやくをころすんだ」 …………がいちゅうって外注の方だったりしないの?ピ○チュウとかラ○チュウの進化でもない? 俺が知らないだけでさ、なんか、そういう別の意味ないの? 「それでね、」 絶句している俺が見えているのかいないのか、颯斗は楽しそうに話を続ける。 「にんげんやくは、がいちゅうをころすのにいろんなほうほうがあってね、たとえばさっちゅうざいとか、」 あとは、あしでふんだり、つぶしたりするかな。 悪びれもなく、変わらない笑みを浮かべてそう無邪気に言う颯斗に、俺は呆然とした。脳みそが、あらゆる可能性を放棄する。 あ、これはだめだ。 だめな、方向。禁断の、開けてはならないパンドラの箱。 颯斗は、4歳。 まだまだ、外で遊んだり、わがままを言ったりする、そんな年齢。 そんな子が、こんな。 これは、狂気だ。 だって、まだ、4歳なのに。こんな、楽しそうに害虫を殺すことを話してる。 「でも、ぼくがこのあそびをするとみんなひっこしたりして、いなくなっちゃうんだ」 やっと分かった。俺は勘違いしてたんだ。 颯斗は、だんだんサイコパスになっていったのではない。 もともと、その素質があったのだ。 それが、ある日加速して、大きくなったに過ぎない。 「かなめくんも、いなくなっちゃう?」 ははっ。 乾いた笑いが漏れそうになって、寸前で子供らしい笑みを浮かべ直す。 こちらを眺めている颯斗の手を掴んだ。 「はやとくん」 「なに、かなめくん」 「はやとってよんでもいーい?」 「え?」 突然関係のないことを言い始めた俺に、颯斗は少しだけ驚いたような顔をしてこちらを見た。 よし、驚いてる。 舐めてもらっては困る。 俺はただの5歳じゃない、前世23歳記憶持ちの成瀬要なんだ。これくらいで諦めたりなんかしない。人生が面白くないって感じるなら、俺が颯斗の予想できないことをして、少しずつ俺が颯斗に倫理観を植え付けてやる。 俺(友達)がいないと面白くないって思わせて、俺の死亡フラグも颯斗の孤独フラグも回避してやる!!! 親友になるまでは、絶対諦めないぞ俺は!!!! 「おれのことも、かなめでいいから。おれ、はやととなかよくして、いつもいっしょにいたいな」   颯斗が恋に落ちるまで、俺は颯斗を人間らしくしてみせる!!そして俺は親友ポジとして颯斗達カップルをそばで見守るぞ!! 颯斗は心の中で決意新たにしながらそんなことを言って笑う俺に、不思議そうに目をぱちくりさせてじっと視線を固定していたが、やがて元の王子様スマイルを浮かべた。ふわり、と花が咲くようだ。 「うん、いいよ、かなめ」 こうして俺は、颯斗の懐に潜り込むことに成功した。
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