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『403号室の女』
すこし前の話になりますが、妄想コンテスト『忘れもの』の回は、私にとって今年最初の結果発表でした。参加作品の『403号室の女』(https://estar.jp/novels/26025006)が優秀作品に選ばれ、2023年の嬉しいスタート。素敵な感想も寄せていただいた幸せな作品だったのですが、さらに幸せな一作となりました✨
こちらの作品には、注意書きを添えてあります。自死に関する表現があるためです。ホラー作品では人の死は避けられない要素であり、時にエンタメ的に、時に不謹慎に、時に問題提起し、その姿勢は作者や作品によって様々です。
私も数々の死を描いてきましたが、このような注意書きを入れたのは初めてでした。ホラー作品ではないこと、現代日本が舞台であること、自殺願望そのものが超常現象とは無関係であること、という主な3点を鑑みて、記載させていただきました。
本作の内容は、自死を否定するものでも肯定するものでもありません。
日本国内での自殺者数は高止まりが続いており、昨年の児童自殺者数は過去最多を記録してしまいました。
人生山あり谷ありですから、私自身も谷底にいた時には(他者から見れば底では無かったかもしれませんが、私の目には底でした)、人生を終えたいと考えたこともありました。
自死は、人生の選択のひとつだと思っています。私は様々な縁に導かれて、別の退路に進み、そちらの道は選びませんでした。
一方、その選択を取った人々のことは、今も時々、思い出します。
Nちゃん。中学のときは結構、言い合いをしたよね。あの頃は私も自分のことで一杯一杯で、全然寄り添えなくてごめんね。
Fさん。入社したばかりでオドオドしていた私に、優しく、穏やかに接してくださってありがとうございました。
N姉ちゃん。
最後に電話で話したとき、お互い泣いてしまったね。次に会ったときの、安らかな顔は忘れられないよ。
最もつらかったのは、身内である、N姉ちゃんとの別れです。姉ちゃんと呼んでいますが姉ではなく親戚です。
遺された側に立ったとき、まず抱いた気持ちは、驚き、呆然、そして、故人への労り。同居家族は、もっと複雑な思いがあったことと思います。彼女の家族に向けて、私は未だに慰める言葉を持ちません。
N姉ちゃんは闘病の末でしたので、通夜や葬儀の場では皆が口を揃えて「ありがとう」「お疲れさま」と語りかけていました。綺麗な顔を記憶に残せたのは、死化粧を施してくださった葬儀屋さんのお陰でもあります。ありがとうございます。
あれから数年。
彼女は頻繁に、夢に出てくれます。和やかな性格で、でも堂々としていて、基本的にマイペースで、抜けたところもあって、繊細で、優しくて。
向こうがあるのなら、楽しく過ごしてね。
無いのなら、さようならは終わったんだね。だけど覚えているからね。
今年は新型コロナが5類になるそうで、また少し、生活様式に変化が起こりそうな兆しがあります。コロナに限らず、春は変化の季節です。何かが変わるとき、その速度について行けないひとがかならずいます。
私自身、変化が苦手なタイプですから、もし同じように置き去りになりそうなひとが身近いたら、見逃さないように目を開いておきたいです。
物事に一喜一憂出来るのも、心身の健康あってこそ。
皆様も、心も体もご自愛なさってください。創作される方々はあまり思い詰めず、一緒に楽しく活動いたしましょう! 私もそうあれるように努めます!
未来の自分にも向けて。
通勤路の桃の花
2023.3.3
緒音 百 拝
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