第1章 遭遇

10/35
前へ
/124ページ
次へ
「しん…死んじゃったら、私達がロストークに帰るのが大変になっちゃうじゃないの!」 咄嗟(とっさ)にごまかしてしまった。 「ヒッ…ヒッヒッ…」 セレの後ろで引き笑いが聞こえた。 ナーガだ。昔の翼竜の子孫である彼は他人の表層思考を読み取る事ができる。ピアリの本心が丸見えなのだ。 「ヒッ…ヒャッ?!」 ナーガの前にピアリがズイッと顔を突き出した。 「ぜっったいに言うんじゃないわよ!」 思い切り怒気を込めて睨んだ。 「わ、分かった。」 タジタジになってナーガはうなずいた。 「言うなって何を?」 セレが怪訝(けげん)そうに言った。 「セレ様、ピアリは…」 うっかり言い掛けるナーガの脚をピアリは渾身(こんしん)の力で蹴った。 「ギゲッ〜!」 ナーガの喉からカエルをつぶしたような声が出た。 緊迫すべき状況の中で騒がしい2人に、ソノはちょっと呆れ顔になったが、セレに向き直ると(ひざまず)き胸に片手を当てて礼を取った。 「セレ様、お初にお目にかかります。ソノと申します。」 セレは困惑気味だ。 「ソノか。気を使わなくていい。今の私には身分なんて無いのだから。それで、ソノは何のために来たんだ? 先程から父上の気配も感じるのだが、一緒ではないのか?」 「オーリ様は、今アーリンと対峙(たいじ)しております。」 「何だって?!」
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加