第4章 セレ

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そんな事はお構い無しにセレは城の中を歩き回った。 まずは『東の塔の少女』の部屋を目指した。階段を上がり、東の塔に繋がる通路の入り口に来た。 少女の歌声は今日は聞こえなかった。代わりに微かに誰かが呻くような声がした。セレが目指す上の方ではなく、階下から聞こえる。 …何だろう… 気になったら見に行かずにはいられない。セレは階段を下り始めた。 すぐ下の階には何も無かった。その下にも、そのまた下にも… どの階にも個室らしきドアが並んでいるだけだ。 更に下って地下になった。外からの光は差し込まず、ほぼ闇になっている。灯火は小さくて、しかも間隔がかなり離れている。自分の足元もよく見えない。 また、かすかな声が聞こえた。 「この辺だな。」 階段の脇に扉があった。錠がかかっている。 …風の魔法を応用すればいい… セレは真空の刃を作り錠を断ち切った。扉を開けると、空気が一層冷たく感じられた。 耳を澄ました。声なのか、音なのか、何かが聞こえた。セレは足を速めた。 廊下の両脇に並ぶ個室は、よく見ると扉に小さな鉄格子付きの覗き窓がある。 …これは牢だ!… 地下は牢獄になっていた。 …罪人が囚われているのか?… セレは覗き窓から中の様子を伺った。
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