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暗がりの部屋の隅に、猫のように丸くうずくまっている者がぼんやりと見えた。
…人間?男か?…
囚われの者はセレに気付いた。立ち上がり、こちらに近づいて来た。
「お前…セレ?セレだな!」
「…?」
セレを知っている男。それは…
「俺を忘れたか?ウォールだ。」
魔法商で狩人のウォールだった。
魔獣を狩ったり、魔法のレアアイテムを手に入れて…時には盗んだり強奪して…売り捌いている商人だ。かつて『大地の竜』を巡ってセレと戦った事がある。
「ウォール?…悪いが分からない。どうも私は記憶喪失というものらしい。」
「記憶喪失だと?アーリンに何かされたな…じゃあ魔法は使えないのか…」
ウォールはガックリとうつむいた。
「いや、待てよ。魔法が使えなかったらここには来られないはずだ。」
そう呟いた。
この区画の出入り口の扉には魔法がかかっていて普通の人間には開けられない。それに、そもそもここはアーリンの城の中だ。滅多に入れるものではない。
「お前はどうやってここに来たんだ?城の周辺は魔法の罠だらけだし護衛の魔法使いもいる。すぐそこにも錠前付きの扉があっただろう?」
「気が付いたら城の中にいたんだ。そこの錠前なら風の魔法で簡単に切れた。」
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