第4章 セレ

22/35
前へ
/124ページ
次へ
「気が付いたら?」 …何かをされて意識を無くしている間に連れ込まれたって事だな。何を…?いや今はいい。それよりも… ウォールは細かい考察は後回しにした。 「とにかく魔法が使えるのならここを開けられるだろう?開けてくれ!」 ここは魔法使い用の牢獄だ。牢の中では一切の魔法が発動しない。ウォールは火と大地の魔法を使えるし、魔法のアイテムも隠し持っているがここでは役に立たなかった。誰かに外から開けてもらうしか無いのだ。 「お前が誰だか分からないのに開ける訳が無いだろう。大体、牢に入れられてるって事は罪人なんだろう?」 「アーリンの欲しい物を持って来られなかったってだけだ。」 「欲しい物?父上は何を望んだ?」 「『父上』だとぉ?!」 ウォールは驚いて目を見開いた。 その様子を見てセレは …あの黒髪の少女と同じ反応だな… と思った。それに少女もウォールも自分の事を『セレ』と呼んだ。 「セレというのが私の本当の名前か?私はここで生まれ育ったのではないのか?」 「お前、自分の名前も祖国も分からないのか?」 セレが偽の記憶を擦り込まれているのだとウォールは察知した。詳細を聞かずともアーリンがセレを自分の(ふところ)に取り込もうとしている事はハッキリしている。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加