15人が本棚に入れています
本棚に追加
セレは訝しげな表情になった。
「この塔の上の方にいる黒髪の少女も私の事をセレと呼んだ。それが本名かどうかは分からないが、そう呼ばれていた事はどうも確からしいな。」
「黒髪の少女ってのはピアリだな。微かに歌声が聞こえて来たから城のどこかにいるとは思ったが…。お前はピアリの事も忘れちまったのか?」
「ピアリ…」
セレは何故か辛かった。自分がとてもいけない事をしている気がした。
「お前はどうして私の事もあの少女の事も知っているんだ?」
「ピアリとお前はいつも一緒にいたから…」
ウォールがそこまで言った時、壁や床にズシンと衝撃が走った。
「うっ?!」
セレは全身に重さがのしかかるのを感じた。強い力で床に押し付けられる。立っていられなくなり、床に膝をつき、両手もつき、四つん這いになった。
「どうした?!」
覗き窓越しにウォールが叫んだ。
「身体が…押し潰される…」
四つん這いでも耐えられなくなり、床にうつ伏せに横たわった。肺が圧迫され、呼吸がやっとの状態だ。
「大地の魔法だ!早く俺を出せ!俺なら解除できる!早くしろ、死ぬぞ!」
「く…」
肺から最後の呼気を絞り出し、セレは風の魔法の呪文を唱えた。
「=====」
扉がスッパリと切断された。
最初のコメントを投稿しよう!