第4章 セレ

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ランスは『しまった』という表情になった。 「せ…折檻とは言っても、もちろん慈悲深いアーリン様の事です。国の秩序を守る為の最低限の戒めです。」 慌ててフォローした。アーリンは、セレにとってはあくまで『敬愛できる人物』でなくてはならない。 「嘘をつけ!」 ウォールがいきり立った。 「毎日のように奥の方から絶叫が聞こえるぞ。拷問部屋だろう?」 個室が並ぶ廊下の先の方を指差した。 「お前こそ嘘を言うな!フリート様、こんな囚人の言う事を信じてはなりません!」 「確かめれば分かる事だ。」 セレはウォールが指差した方へ行こうとした。 「いけません!先ほど言ったように魔法の罠があり危険です!」 ランスはセレの前に立ちはだかり必死に引き留めた。 「本当かな?」 ウォールは薄ら笑いを浮かべ、ランスを突き飛ばした。 「わっ!何をする!」 ヨロヨロとランスは後ろ歩きに数歩、下がった。 するとランスの足元から紫色の煙が立ち昇った。 煙は数本の細いロープ状になりランスの全身に絡み付いた。 「うわっ!」 そのロープが光ると、ジュッ、と音がした。 「あああーっ!!」 布や肉の焼ける匂いが立ち込めた。 「本当だったな。こいつは『火縄(ループフェゴ)』。火の魔法だ。」 ウォールは顔をしかめた。
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