第4章 セレ

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「解除できるか?!」 セレはウォールに迫るように言った。 「必要ないだろ。」 ウォールは突っぱねた。 「できるならやってくれ!」 命令的な懇願だ。 「……」 ウォールはセレを睨みながら考えた。 …ここを出るのに役に立つかもしれん。こいつに貸しを作っておくのもいいか… 「分かった。その代わり俺の頼みもひとつ聞いてもらうぞ。いいな?」 「ああ。何でも言え。」 セレはうなずいた。 ウォールが短い呪文を唱えると火縄は一瞬で消えた。 「ランス!」 ランスは床にうずくまり呻いていた。 セレはしゃがんで傷の具合を見た。 縄が絡み付いた部分の皮膚が赤く焼け(ただ)れて気味の悪い模様になっていた。 「これはひどい。医者にみせよう。」 「う…あ…あの医者なら偽物だ。治療なんかできない…」 セレを『記憶喪失』と診断した医者の事だ。 「偽医者だと?…ならば他で治すしか無い…。ウォール、治癒の魔法というのは無いのか?」 『なぜ偽医者なのか』を考えるのは後回しにしてセレはウォールを見上げた。 「俺は魔法医じゃないから治癒はできないが、痛み止めぐらいなら持ってる。」 ウォールは上着の内ポケットから小さな皮袋を出した。 中にはガラスの小瓶があった。半分くらい液体が入っている。
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