第4章 セレ

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「塗り薬だ。火傷自体は治らないが痛みは引く。」 「無いよりずっといい。ありがとう。」 しかし傷の面積に対して薬は少なかった。全身の傷に行き渡るように、量に注意しながら振り掛けて行く。 ふとセレの手が止まった。 …同じような場面を見た事がある気がする… それはセレとウォールが最初に戦った時の事だ。セレはウォールの雷撃をくらい全身に火傷を負った。その時にピアリが薬を塗ってくれたのだった。 懐かしいような感覚を覚えたが…やはり思い出す事はできなかった… 薬の塗布が終わるとウォールは言った。 「俺の願いも聞いてくれる約束だな。」 「ああ。」 「さっきの魔法書の中から俺が魔法を選ぶ。それをお前が発動するんだ。」 「私が?大した魔法は使えないぞ。」 「いや、お前は4種の魔法を使える偉大な魔法使いだ。」 「嘘をつくな。」 「嘘じゃない。試してみよう。まずは魔法を選ぶから魔法書を貸してくれ。」 セレは魔法書を出すと開いて渡した。 ウォールは真剣な目で1ページずつ閲覧(えつらん)していく。 数分もかかったろうか。 「うん、これがいい。」 指し示したのは大地の魔法だった。 『圧壊 ポーダ・ピブレ』。 セレがロストークの離宮で最後に使った『鎮圧 ポーダ・ブレニエ』のライト版だ。
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