第4章 セレ

30/35
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
2人の後ろからボソボソと声が聞こえた。 痛みが引いて落ち着いたランスが何やら呟いていた。 「…だから…上手くいく訳無いんだ。ロダ様だってニーナ様だって出て行ってしまったじゃないか。私だってできる事なら出て行きたい…」 「何?」 セレは振り返り、ウォールは探るような目でランスを見た。 「私は…遠目も利くし、周りの様子や人の洞察だって得意だ。『目利き』ってやつさ。アーリン様はこの能力を欲しがったんだ。だから私をあの手この手でこの城に引き入れた。10年前の話だ。」 最初は独り言だったが、セレ達が反応した事でランスは2人に語り始めた。 「でも、あの爬虫類人の2人には敵わなかった。奴らがいつもアーリン様の側にいた。」 リーニエとディルザの事だ。 「私はずっと奴らより下だった。いつか奴らよりも上になりたいと思っていたよ。 最近、何故か奴らがいなくなって…その願いは叶ったんだが…。この立場になって初めて奴らのやっていた事が分かったんだ。 アーリン様の欲するものを手に入れる為には何でもするのさ。暗殺、謀略、強奪、詐欺…とにかく何でもだ。 今…アーリン様が一番欲しいのはあんただ。あんたの立場と魔法の力なんだよ。」 ランスはセレを指差した。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!