第4章 セレ

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なんとか部屋を出ようと周りを見回した。 ドアと窓は固く閉じられて動かない。他に出られそうな場所は無い。 「でもさっき…」 セレがしがみ付いた鉄格子はあっけなく壊れていた。欠損した部分は握り拳2つ分ほどで、とてもそこからは逃げられそうもなかったが… …もしかして何か変わったかな… 窓を押し開けてみた。 わずか数センチでカツンと鉄格子に当たる。今までと変わらない。 力を込めてみた。 「このーっ!」 やっぱり開かない。 今度は勢いを付けてみた。 ガツン! 大きな音がしただけで、びくともしない。 細い隙間から冷たい風が入って来るだけだ。 …無理か。ほんの少しでも魔法が使えないかなぁ…『水鏡』さえ使えればセレに付けてある雫玉に繋がるかもしれない… 昨日まで何度試しても一度も発動しなかった。ここもまた魔法無効の空間なのだ。 それでもピアリは諦めきれなかった。 …もう一度やってみよう… カップの中で冷えた紅茶を見つめ呪文を唱えてみた。 …お願い。繋がって… 強く、強く念じた。すると… 紅茶の表面がわずかに盛り上がり、その波動が幾重ものリングになった。それはやがて平面に戻り、鏡の様に映像を映し出した。 「できた!」 セレが鉄格子の一部を欠損させた事で、魔法無効の結界が破れたのだった。
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