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第5章 異変
「…陛下?」
「……」
「陛下、どうなされました?」
「ん?…ああ、少し考え事をしていた。何だ?」
セレの祖国ロストーク。その王宮の一室での会話だ。
呼びかけたのはタリヤ。
長身の男性だ。歳の頃は三十代半ばの筈だが、その若さにはそぐわぬ落ち着きと精悍さを持っている。ダークブラウンのストレートヘアはきっちりと一つに結ばれている。
優れた剣士であり、魔法もかなり使える彼は、王の護衛であり側近でもある。王が少年の頃からずっと仕える忠臣だ。王からの信頼は厚い。
タリヤが3回も呼びかけて、やっと王は反応した。
…最近、どうも陛下の様子がおかしい…
今のように、どこを見ているのかわからない目でぼうっとしている事が多くなった。ただの考え事のようには思えない。会話がちぐはぐになる事も増えた。
「どこかお身体の調子が悪いのですか?」
心配そうに王の顔を見る。
「いや。何ともない。」
王は答えた。
ロストーク国王。名前をヤールシュレイテ・ロルム・ハティアス・イスタ・ランディールと言う。
通称ヤール。セレの弟だ。
「陛下、最近お疲れなのでは?」
「そんな事はない。いつも通りだ。疲れているように見えるか?」
「はい。御気分が優れないようにお見受け致します。」
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