第5章 異変

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「僕と?」 こんな所で2人きりの話しとなれば、ローエンの事だろう、とトアンは思ったがその予想は半分外れた。 「最近、陛下が何か違うのだ。」 タリヤは、国王の言動がまるで老人のように感じる事がある、と話した。 「もの思いに(ふけ)るというよりは、ただボーッとしているだけに見える。会話にも筋が通らない事が度々ある。陛下はまだ20代だぞ。」 タリヤの口調に沈痛なものがにじむ。 「若い者にもそういう症状が出る事もありますが…ちょっと違うような気がします。」 トアンの頭の中にいくつか病名が浮かんだが、これだけでは特定できない。 「ローエンに診てもらいたいのだが、君も知っての通り彼は信用ならん。どうするべきか君の知恵を借りたいのだ。」 「…そうですね。今のところローエンさんに怪しいものは何も感じませんが…。では、陛下の名を伏せて症状だけを伝えて、意見を聞いてみるというのはどうでしょう?」 やはりトアンは思慮深い。タリヤはその案に賛成した。 「そうしてくれ。陛下の様子をできるだけ詳しく話す。そのまま伝えて欲しい。」 タリヤは克明に最近の王の変化を説明した。 その話を書き留めながら、トアンは気付くところがあった。 …僕も調べてみよう… 自身もひそかに動く事にした。
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