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結局トアンはタリヤの『密命』を受けた形になった。
薬草の採取と図書館での調べ物を終えると、早速ローエンのもとへと戻った。
トアンは少し風の魔法が使える。馬に風の魔法をかけると通常の早馬よりも数倍の速度が出る。
その速度で1時間弱、王宮から南西に走ったところにローエンの家がある。
目印は大きな合歓の木。
10メートルほどの高さがある。枝の広がりはその3倍になる。他ではまず見ない大木だ。ロストーク王国の祖ファーダの時代から生きているとも言われる。ヴァシュロークも大切にしていたと聞く。ロストークの歴代の名だたる魔法使いも、やはりこの大樹に何かを感じていたらしい。伝記に時折、この合歓の記述がある。
トアンはそこまで植物の魔力に敏感ではないが、この合歓の木には敬虔さを感じ、そばを通るたびに敬礼する。
今日も合歓の木を見上げながら、右手を胸に当てる。
その幹の向こう側に丸太小屋が見えた。そこにローエンが住んでいる。
生前ヴァシュロークが入り浸っていた場所でもある。彼はこの場所が気に入っていた。自分の邸から必要な機材や資料を持ち込んで、勝手に魔法医学の研究室にしていた。
もっとも、最初はローエンがヴァシュロークの技術と人柄に惚れ込んで助手をやっていたのだ。
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