第5章 異変

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ローエンは魔法石フィズの製作と、セレにその石を宿らせるのにも関わっている。 本当なら7年前に死んだはずのセレが、フィズの力で生き延びたのを知っている数少ない人間の一人だ。 ヴァシュローク亡き後、セレを託されたのもローエンだ。ヴァシュロークが心から信頼している証拠だ。 そのローエンが、セレを良からぬ事に利用しようとしている…?  …あの時、僕達にセレ様の宿を襲えと言いに来たのは間違いなくローエンさんだ… トアンはレダリアでの事を思い返していた。 レダリアの第2王子に『偽りの魂』という、他人の身体をその能力ごと乗っ取れる秘薬の作り方を教えていたのも、恐らくローエンだ。 トアンはここ2ヶ月ほど、ローエンのもとで魔法医学の勉強をしながら、彼の身辺を調べていた。 だが、全く何も無い。 そしてローエンは生真面目で実直。悪い事ができる人間には思えない。 …それでも、まだ信用するのは危険だ… トアンは、王の症状を自分の親戚のものとして話そうと考えていた。 「ローエンさん、ただいま戻りました。」 木の扉を軽く叩いた。 「ああ、お帰り。」 いつも通りにローエンは扉を開けて迎えた。無愛想だが、目元は優しい。 鼻の形がピアリと同じ。 そう、彼はピアリの父親だ。
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