第5章 異変

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「早かったね。」 ローエンは早速、薪ストーブ兼コンロに湯沸かしポットを乗せてお茶の用意を始めた。 「ええ。薬草もすぐに見つかりましたし、調べ物も捗りました。」 トアンもごく普通にカップを2つテーブルに並べ、いつもの椅子に腰掛けた。 まるで、昔のヴァシュロークとローエンの様子をそのまま再現しているかのようだ。 どちらかと言えば粗末な小屋の中に、場違いな芳香が漂い始めた。ローエンが淹れた紅茶だ。王室御用達の茶葉を使っている。 全く飾り気の無い朴訥(ぼくとつ)な小屋と、その主人。それらからは想像できないが、ローエンは7年前に爵位を授かっている。ヴァシュロークと共に魔法医学で大いに国に貢献した事への褒賞だ。 王室との繋がりが深いヴァシュロークの弟子、という事も大きい。 「この香り…いつもながら落ち着きます。」 「うん。そうだね。ヴァシュローク様もお気に入りだったよ。」 ローエンもいつも通りに腰を下ろした。 紅茶を口に含みながら、ローエンはトアンの鞄からはみ出した薬草類に目が行った。 「その薬草は?今回キミが欲しいと言っていたものではないね?」 「これは…親戚の者が気になる症状を訴えて来まして…」 トアンは実に自然に『王の症状』の説明を始めた。
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