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だが、時折少し傾斜が緩くなった所で馬を止め神経を研ぎ澄まして周辺を伺う。
アーリンは強力な魔法使いであり自信に満ちているが、迂闊ではない。警戒は怠らない。
…何も無いな…
確認が終わると再び馬を進めた。
が、ほんの数歩で止まった。
「アーリン様?」
ディルザが何事かとアーリンを見る。
「静かに。誰か来る。」
声を顰めてアーリンが言った。
「速い。常人ではないな。魔法使いだ。…強いぞ。」
「……」
ディルザは黙ったまま戦闘モードに切り替える。目に鋭さが増し、戦士としてのオーラが滲み出る。
アーリンは右の方に視線をやる。ディルザもそれに倣う。
二人の右手の方、20メートルほど離れた茂みの中から音も立てずに現れたのは、馬に乗った威風堂々たる初老の男性。
アーリンに負けない眼力と強い魔法の波動がある。
その人物を見てアーリンは一瞬、驚きの表情になったが
「これはこれは…ロストークの先王様ではありませんか。こんな所にどうして?」
慇懃な態度で言った。しかし微塵も尊敬の念は感じられない。それどころか圧がある。
だが、初老の男性はアーリンの威圧にはびくともしない。
「貴様こそ。どうしてここに居る?チュリムアに幽閉されていた筈だが。」
セレの父親オーリだった。
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